100年に1度の怪談ブームが来るです。
今回の劇の背景にしたのは関東大震災を挟んで、明治維新の内戦、日清、日露、そして第一次大戦と大きな社会的な変動と動乱があった時代、つまりは、初の怪談であり「時代物」でもあるのです。
怪談文学の第一人者で今回ずいぶんとその著作のお世話になった文芸評論家の東雅夫さんによると「江戸の文化文政時代、鶴屋南北の四谷怪談や、幽霊や妖怪の浮世絵を描いた葛飾北斎などによる一大怪談ブームから、明治大正時代の柳田國男、泉鏡花、芥川龍之介、夏目漱石、小泉八雲ら文豪によるブームは社会的な不安と密接な関係があるように思われる」とのこと。
なるほど、社会情勢は東日本大震災をはじめ熊本、能登、それ以外にも各地で地震は頻発し、加えて与党の一方的な政治体制とそれに忖度し都合の悪い事実を伝えようとしないマスコミ、そしてガザやウクライナの一方的で終わりの見えない暴力、確かによく似ています。そのブームを意識してというわけではありませんが、個人的な「加齢」だけではないやはりある種の不安が根底にはあるように思います。
怖いが売りの怪談もそれはそれで結構なのですが、ここはひとつ旧暦のお盆の怪談を通して過去と結びつき、話に登場する幽霊のことを考えてこの現実を少し飛び越えてみるのはいかがでしょうか。
ちなみにお盆というのは旧暦では必ず満月の日にあたるようで、それが何を意味するのか、なぜ昔の人は月を死の世界として捉えたのか、そんなことも話を聞きながら少しだけ考えてみるのもいいかもしれません。
最後になりますが、東雅夫さんは5年前浅草「芸楽祭」で我々が上演した「七月の客人」で、作品が受賞した文学賞の選考委員長を務めていたというご縁もあり、前回同様に今回もご招待を考えています。